薔薇の香りと共に

「ユエって言ったけ?」


「あ、はい…」


「そんな緊張すんなよ。てか同い年なんだからタメ口聞いていいんだぜ?」


緊張で顔を強ばらせる私を見て、彼は眉を下げてクスリと笑った。


「わ、わかった…」


おずおずと頷く私に彼はふと笑うと


「俺、絢斗【アヤト】・ミレイ・ミッドフォード。よろしくな」


ほんと、なんて綺麗な顔なんだろう…


アヤト……さっき部屋に来たのは彼だったんだ…


「あ、よろしく…えと、アヤトくん…でいいの?」


「ああ。母親がイタリア人だからな、ミレイってのはミドルネーム。」


「そうなんだ…?」


「ちなみに母方の祖母が日本人だから絢斗ってのは日本名。」


「日本人…!」


日本という単語に驚き目を見開く私に彼はクスリと笑う


「日本人て言ったら、あいつも母親は日本人なんだよ。お前と一緒だな」


と言って指差した先には、壁に背を預け、目を伏せている黒髪の少年がいた。
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