薔薇の香りと共に
「ユエ、というのはどんな漢字を使うんだ?」
と、鏡夜さんに聞かれた
「あ、えと…月と書いてユエです」
「綺麗な名だな。クラウスさんが付けたのか?」
と、鏡夜さんは彼を振り返る。
「まぁね。ユエが産まれたのは夜で、その日は三日月だったんだけど、月明かりが凄く綺麗だったんだよ」
お父さんが…私の名前を……
知らなかった…
「それで月と名付けたの…?」
そんな私に、お父さんはにこりと優しく微笑み…
「暗い闇の中、形を変えながらも美しい月がね、あの日、僕の瞳には今までで一番美しく見えたんだ。
いくつになっても、永遠に美しい月のような女性になってほしいという想いから月-ユエ-と名付けたんだよ。」
そう言われたとき、何故だかジーンと目頭が熱くなり、胸がいっぱいになってしまった。