薔薇の香りと共に
「アヤト、君達の父さんは?」
「さぁ?知らね。また離宮にでもいるんだろ」
そんな絢斗くんの答えにクラウスさんは小さく息を吐いた。
「自分で呼んでおきながら、居ないってなんなんだかね」
「そういうもんだろ、いつも」
クオンさんの言葉にアヤトくんは呆れた笑みを漏らして言った。
なんだかちょっと重たい空気…
と、そんな空気を破るように
「ナイル」
目を伏せたままのクラウスさんがそう静かに声を上げた。
すると…
ガチャリ…
「お呼びでしょうか」
扉を開けて綺麗に腰を折り礼をするナイルさん。
え…?もしかして、扉の外にずっといた??
「離宮の方に行って、兄を呼んできてくれないか」
と、クラウスさんが言葉を発した途端…
「その必要はない。」
という低い声が響いた。
その声の主は、ナイルさんの後ろから室内へ足を踏み入れて来た。
彼は…誰…?
ぁ…もしかして…
「なんだ、いらしてたんですか。」
「少しばかり待たせたようだな」
淡々と言葉を交わすクラウスさんと先程部屋へ入ってきた彼。