薔薇の香りと共に
「どうしてそんなことが言えるんですか…?」
気づいたら…声を上げていた…。
「…!」
クラウスさんが驚いたように私を見下ろす。
「ほう…犬の娘が意見するか」
「クラウスさんは犬なんかじゃないっ!クラウスさんは…あなたの弟でしょう!?どうしてそんなっ」
「何も知らない小娘が出しゃばるな。口の効き方に慎め」
「何も知らなくても…、あなたのクラウスさんに対する態度は非難するべきだということくらい分かるっ!」
「この私を非難するか、身の程知らずもここまでくると話にならんな。」
彼は冷たく言い切ると、背を向けて部屋を出て行ってしまった。
え…?
状況が読めずに呆気にとられていると…
「ハァ…」
重たいため息が聞こえた。
それは、クラウスさんのもので…
彼は沈痛な面持ちで私を見ると
「ユエ、君はなんて無茶なことを…」
と、私の背を優しく抱き寄せ、頭に手を乗せた。
私、いけないことをしてしまったの…?
「…驚いた。親父にあそこまで真っ向から突っかかる奴初めて見た」
「命知らずだな……」
「ミッドフォードの者じゃなかったら…きっと消されてたね」
「まったく、ハラハラしたよぉ…」
アヤトくん、鏡夜さん、ルアくん、クオンさんが口々にため息混じりの台詞を吐く。
それを聴いていたクラウスさんは、小さく息を吐くと…
「いいかい、ユエ。ここにはここでの、守らなきゃいけないルールがある。」