薔薇の香りと共に

「それでね、あんたにイギリスに来ないかって話が来てるの…」


イギリスに…?


「お父さんが、月と暮らしたいって」


お父さんが………


クラウス・ミッドフォードが……?


「月がお父さんに会いたいと、一緒に暮らしてみたいと思うなら、私は止めないわ。…月、どうする?」


どうしたらいいだろう……


確かに、お父さんには会ってみたいけど…


イギリスなんて、そんな遠くに…


「お父さんと暮らすことを選ぶなら、高校は辞めることになってしまうし…、私は一緒には行けないから、一人で行くことになるわよ」


「ど、どうして…」


「…あんたの生活は一転することになるわ」


「私の生活が……、…お、お母さんは、行けないってどうして…?」


「どうしても一緒には行けないの。…あのね、私の口からはあんたのお父さんのことは、名前しか教えられないのよ」


名前…だけ…?


「お父さんがどんな…人物…か知りたいと思うなら、お父さんに聞きなさい。

それと、あんたのことも…お父さんが全部教えてくれるわ」


「お母さんじゃ…駄目なの…?」


その問いに母は静かに頷いた。


「…16歳の誕生日に、全てを知りたいのなら、おいで って。」


そう言って母は私に飛行機のチケットを手渡した。
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