薔薇の香りと共に
もし、このチケットを使ってイギリスへ行くなら……
この16年間、父が一度も私の前に姿を表さなかったこと…
そして、父と母のこと…
さっき母が言ってた、父がどんな人物か…
そして、私のこと…全て知ることができるの…?
今更、お父さんなんて……
そういう思いもないわけじゃない。
だけど…真実は、知りたい…
高校を辞めることになっても…
今までの平凡な日々を捨てることになっても…
私は、本当のことを知りたいから…
「お母さん…私、行ってくるよ」
私がそう言うと、母は一瞬悲しそうに顔を歪めた。
だけど…
「…そう、気をつけて行くのよ…」
そう言って優しく微笑んでくれた。
あの時の母の表情が何を思ってのことだったのか、私は分からないまま…日本を発った。