Sweet Honey Baby
 なんだかんだと一通り親子の会話?をこなし、遅れてきた両親も挨拶回りがあるからとにこやかムードのままあっさりと別れた。


 あたしからすれば、なんというか空々しすぎるというか、普通の親子だったら「うわっ、淡白すぎ!」とか思う対面だったと思うけど、高校生にしてすでにでっかい邸で一人暮らしの一也にしてみれば至極珍しくはないものだったようだ。


 …なんだか、ホント、セレブって見かけの華やかさと違って、ヤな世界だなあと思う。


 もっともそれも、あたしのような異端分子が入り込んだから感じる違和感であって、当の本人たちにしてみれば、その中にも溢れる愛が秘められているのかもしれない。


 けれど、この2か月ほどすごした財前のお邸にしても、門倉のお邸にしても、邸の中は確かにいつも快適な室温で管理されていて、照明もすっごく明るくて、人の出入りも多いけど、家族と家族のふれあいは希薄だった。


 やっぱ、『4畳半の幸せ』とかいうのもベダかもしれないけど、そういうのってあるよね?(いまどき4畳半しかない家なんてないか…)


 だいたいまだ未成年の息子を、ここまで放置ってありえないでしょう。


 煙草を吸ってるところは見たことないけど、女はもちろん、酒だってもう嗜んでるっていうレベルじゃなくってもう普段から飲んでるって感じで、違和感ないし。


 少なくても、あたしを育ててくれた永嶋の家族は、楽しくもないのに家族内で上っ面な笑顔で会話しあったりしなかったよ。


 悪いことをすれば怒られたし、良いことをすれば褒められた。


 学校で一番なんて、すっごいことなのに、一也の態度から、そういった努力も親に伝わっていない気がした。


 そんな風につらつら考えてたら、いつの間にか脳裏からシャットアウトしてしまっていた一也があたしの顔を不思議そうにジッと見ていた。




 「…なに?」

 「いや、お前、本当にあの二人の子だったんだな、って思ってさ」

 「は?」




 藪から棒に何言いだす。


 本人的には合理的なんだろうけど、時折この男は唐突的過ぎて、あたしにはとっさに何を言っているのかわからないことが多い。


 「カンの鈍い奴」的な視線は辞めて欲しいんですけど?




 黙って見返していたら、仕方ねぇなとでもいいただけに、肩を竦め、




 「永嶋に娘が二人いるなんて話聞いたことなかったのによ。妹がいきなり重篤な持病抱えたとか言って俺の婚約者から外れたと思ったら、姉が出てきて代打だろ?体弱くて地方にいたとかいう胡散臭せぇ触れ込みだったし、俺はてっきり、お前は愛人の子かなんかなんだって思ってたぜ」
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