Sweet Honey Baby
なんだか、この女が俺に対してガッカリしているのはなんとなく伝わってきていた。
以前だったら、別に名ばかりの婚約者にどう思われていようと全然かまわなかったし、今は親父に逆らうのは得策ではないから大人しく『婚約者』という女を受け入れてたけど、将来本当に結婚するつもりなんて欠片もなかった。
第一、歴代の婚約者を選んできたのは、親父じゃなくって、親父の女…愛人ってやつだ。
成金で、血筋で辛酸を舐めてきた親父は、金の次は権力、権力の次は血筋と、見事なくらいにステロタイプの男だった。
それで結婚した俺のお袋と上手くいかなくって、長年離婚もできずに別居してるくせに、今度は自分の息子にも同じ理由で同じような女をあてがおうっていうんだから笑える。
そしてその親父の意向を入れつつ、血筋はいいが、いざとなれば何かしら都合をつけて俺を失脚させられる程度の実家の力しかない女を見つけてあてがって来るのが親父の女だ。
10年以上も前から、親父の秘書として世界中を飛び回る傍ら、この邸や世界各国の邸で女主人然として君臨している。
いくら主人面したって、てめぇは親父の『妻』じゃねぇだろ。
この家の跡継ぎは、『兄貴』じゃなくって『俺』なんだという自負で、俺はあいつらを見下してきた。
その大っ嫌いな『愛人』の娘を俺にあてがってきたのかと思ってたから、いくら結婚する気もなくって、歴代の婚約者同様、適当に遊んでポイ捨てにしてやろうと思ってたにしろ、正直ムカついていた。
財前の正当な跡継ぎに愛人の子供?
本当は何の理由があったのか知らねぇけど、妹がダメだからって姉をあてがうなんて、門倉もいい度胸してるじゃんよ、みたいな。
門倉も、旧伯爵家だかなんだかで、俺の婚約者の母親は天皇家の血筋も入っているという触れ込みだった。
確か、婿養子の旦那の方だって門倉の遠縁の男で何代か前には総理も出している家紋の出身だ。
…ま、あの女狐にしてみたって、あんまり変な女連れて来ても親父の逆鱗触れるしな。
家格が釣り合って血筋がいい、そんでもって政財界には実質的な力がない斜陽の家っていう基準で選らんだ婚約者だったんだろう。
けど、だいぶ俺に馴染んできて、それなりに気安い雰囲気を保っていた女の顔が妙に堅い。
愛人の子と勘違いしてたなんて、血筋の良さで選ばれた婚約者としては腹に据えかねたってことなんだろうか?
あんまりそういうこと気にしそうにないから、俺も正直に話したんだが、なんだかいつも以上にそっけない態度を取られると面白くない。
本当は綺麗に化粧して、この間俺と合わせたドレスがスゴイ似合ってるって、たまには耳に心地よいだろうお世辞の一つも口にしてやろうと思ってたっていうのに、なんだかそんな雰囲気じゃなくなっていた。
俺みたいな最高の条件の男をパートナーになんてできてる女はお前くらいなんだぜ。
この俺が、気を使ってエスコートしてやってるのなんて、初恋のアイツ以外にはお前が初めてなんだ。
そう知らしめてやって、会場中の女たちの羨望の眼差しを集めている栄誉を感謝させてやりたいのに、たぶん俺がそれを言っても、「あっそ。ソレハアリガトウゴザイマス」と、またも棒読みでの無感動なセリフを吐かれるんだろう。
それが予想できちまうなんて、俺もたいがい焼きが回ったもんだぜ。
以前だったら、別に名ばかりの婚約者にどう思われていようと全然かまわなかったし、今は親父に逆らうのは得策ではないから大人しく『婚約者』という女を受け入れてたけど、将来本当に結婚するつもりなんて欠片もなかった。
第一、歴代の婚約者を選んできたのは、親父じゃなくって、親父の女…愛人ってやつだ。
成金で、血筋で辛酸を舐めてきた親父は、金の次は権力、権力の次は血筋と、見事なくらいにステロタイプの男だった。
それで結婚した俺のお袋と上手くいかなくって、長年離婚もできずに別居してるくせに、今度は自分の息子にも同じ理由で同じような女をあてがおうっていうんだから笑える。
そしてその親父の意向を入れつつ、血筋はいいが、いざとなれば何かしら都合をつけて俺を失脚させられる程度の実家の力しかない女を見つけてあてがって来るのが親父の女だ。
10年以上も前から、親父の秘書として世界中を飛び回る傍ら、この邸や世界各国の邸で女主人然として君臨している。
いくら主人面したって、てめぇは親父の『妻』じゃねぇだろ。
この家の跡継ぎは、『兄貴』じゃなくって『俺』なんだという自負で、俺はあいつらを見下してきた。
その大っ嫌いな『愛人』の娘を俺にあてがってきたのかと思ってたから、いくら結婚する気もなくって、歴代の婚約者同様、適当に遊んでポイ捨てにしてやろうと思ってたにしろ、正直ムカついていた。
財前の正当な跡継ぎに愛人の子供?
本当は何の理由があったのか知らねぇけど、妹がダメだからって姉をあてがうなんて、門倉もいい度胸してるじゃんよ、みたいな。
門倉も、旧伯爵家だかなんだかで、俺の婚約者の母親は天皇家の血筋も入っているという触れ込みだった。
確か、婿養子の旦那の方だって門倉の遠縁の男で何代か前には総理も出している家紋の出身だ。
…ま、あの女狐にしてみたって、あんまり変な女連れて来ても親父の逆鱗触れるしな。
家格が釣り合って血筋がいい、そんでもって政財界には実質的な力がない斜陽の家っていう基準で選らんだ婚約者だったんだろう。
けど、だいぶ俺に馴染んできて、それなりに気安い雰囲気を保っていた女の顔が妙に堅い。
愛人の子と勘違いしてたなんて、血筋の良さで選ばれた婚約者としては腹に据えかねたってことなんだろうか?
あんまりそういうこと気にしそうにないから、俺も正直に話したんだが、なんだかいつも以上にそっけない態度を取られると面白くない。
本当は綺麗に化粧して、この間俺と合わせたドレスがスゴイ似合ってるって、たまには耳に心地よいだろうお世辞の一つも口にしてやろうと思ってたっていうのに、なんだかそんな雰囲気じゃなくなっていた。
俺みたいな最高の条件の男をパートナーになんてできてる女はお前くらいなんだぜ。
この俺が、気を使ってエスコートしてやってるのなんて、初恋のアイツ以外にはお前が初めてなんだ。
そう知らしめてやって、会場中の女たちの羨望の眼差しを集めている栄誉を感謝させてやりたいのに、たぶん俺がそれを言っても、「あっそ。ソレハアリガトウゴザイマス」と、またも棒読みでの無感動なセリフを吐かれるんだろう。
それが予想できちまうなんて、俺もたいがい焼きが回ったもんだぜ。