Sweet Honey Baby
 「嘘なんでしょ、って言われても」




 それだけは本当なので、どう答えようもない。





 「それより、なんで門倉家なのっ。血筋だけはいいかもしれないけど、実家の実力はたかがしれてるじゃないっ」




 蓉子ちゃんの隣にいる子が、睨みつけてくる。


 その顔から、ああ、この子、本当に一也のことが好きなんだなっ、て察せられた。


 まあ、外面いいしね。




 「どうせ、長持ちしないのよ。前の子も、前の前の子も、もって2,3か月だったじゃない」




 毒…を含ませてるつもりなんだろうな。


 正直、この婚約が破談になるのはあたしとしても得策じゃないんだかけど、だからといってそれで死ぬほど悲観するわけでもない。


 義理もあるから精一杯頑張るつもりだけど、ダメになったらダメになったで、ま、仕方ないか、という気もしていた。


 しかし、2,3か月って確か、メイドのシマちゃんも似たようなこと言ってたな。


 あの我儘坊ちゃん、婚約者も気に入らないとポイ捨てなのか。


 そのわりには唯々諾々と一見の婚約者と同居できる神経がわからないけど、同居っていっても家はデカイくて顔を合わせないようにしようと思えばできるし(そのわりによく顔を合わせてる気もするけど)、いきなり初対面でベッドに引きずり込むような非常識な男だもんねぇ。


 こっちのこと人間とも思ってないとか?


 しばらく暮らしてみた感じ、そこまで酷い男だとは思っていなかったけど。




 「財前様が、お好きのなのは、理沙帆さんだけですもの」

 「……え?」




 なんか今、凄いこと聞いたぞ。


 いや、あいつだってお年頃の高校生男子。


 好きな子の一人や二人いてもおかしくない、か?


 あたしのポカンとした顔に、やっと自分の攻撃力を感じることができたのか、楽しそうに目配せしあいながら口々に理沙帆様の情報を与えてくださる。




 「間宮理沙帆さん。間宮商事の一人娘で、おじいさまが元総理大臣の○○○○氏」

 「高校時代、3年連続ミス・聖林学園で、去年のミス・ユニバース・ジャパンのファイナリストよ」

 「現在は、アメリカのハーバード大学に留学中で…」




 なるほど、家柄よし、顔よし、頭よしのスーパーお嬢様だと言いたいわけね。




 「あなたみたいな、ポッと出の、手垢のついた女なんてお呼びじゃないのよ」

 「…何やってんだよ」
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