Sweet Honey Baby
「えっと、永嶋…」
じゃなかった。
「門倉千聡…です」
一応、最後に『です』をつける。
こんな言い方をあたしにするってことは、コイツが例の…。
「そ、俺は財前一也。お前の婚約者?もう、飯終わった?」
飯…見ればわかるだろうけど、コースでいうメインだよ。
まだ、この後、パン→フロマージュ(チーズ)→デセール(デザート)と続いて、やっとカフェで終わるわけだから、どう見たってまだまだ道半ば。
まあ、普段は食欲旺盛なあたしもすっかり食べる気が失せていたからいいけど、これってかなり横柄だよね?
「…終わってないけど、まあ、とりあえずいいです」
「ハッキリしねぇな。ま、いいや、来いよ」
「え?ちょっと!」
失礼なことに、人の腕を勝手に掴み、そのままズルズルと外に引きずっていこうとする。
コイツがどういう人かなんてあたしだってわからないけど(あ、婚約者なんだっけ?そう名乗ってたよね)、初対面でいきなりこれはあまりに横暴なのではないだろうか?
いつもは途中退座するな、作法を忘れるなと煩い先生や使用人たちも、あたしの助けを求める目からさりげなく視線を反らして、何気にこの状況を無視している。
まさか、こいつDVとかしちゃう人?!
やっぱりあたし、早まった?!
いくら結婚に夢なんてなかったって、家庭内暴力とかは勘弁して欲しい!
ちょっ!誰か助けてよっ。
どうやら、自分で自分を助けないとこの場はどうにもならないらしい。
力任せに引きずる男の手を、思いっきり振り払い、あたしは男から一歩後退った。
「ちょっと!いきなりなんなのよっ。どこのお坊ちゃまだか知りませんけどね?レディをいきなり引きずって、いったいどこ連れてゆくつもりよっ!?」
「…レディ?」
あたしの頭のてっぺんから足のつま先を眺め下ろす目が、揶揄に満ちている。
あたしだって、自分がレディだなんて口が腐っても思わないけど、この家にいる以上、その自覚を常に持てと言われている。
と、いうことは、この家の人たちだって、あたしにそう対峙するべきだよね?
そうは言うものの…なんていうか、この男、すっごくヤバそうな雰囲気って言うか、間違っても友好的な雰囲気じゃない。
そのくせ、妙にセクシャルっていうか色っぽくてニヤリとした顔も厭らしいっていうよりセクシーで。
…テンパって、まともに気にしてなかったけど、すごい美形ってやつだわ。
正直、こういう味もクソ(失礼)もないような、完璧に整い過ぎた顔ってあたしの好みじゃない。
現に、非人間的で冷たくって、あたしからすれば少しも魅力的じゃなかった。
…まあ、すごい顔小さっ、とか、何このスタイル、これが噂の8等身?とかうっかり感心したくなっちゃうけどそれはまあ、あたしも普通の美的感覚は備わってるってことで。
「お前、生意気。どうせ斜陽の家がうちの威勢を借りたくって送り込んできた娘だろ?俺が右向けつーたら右向いて、左向けつーたら左向けばいいんだよ」
「……」
初対面で『お前』呼ばわりもすごいけど、あまりの俺様発言に思わず黙っちゃったわ。
凄すぎる。
こういう人って本当に世の中に生息してたんだ。
唖然としている間に、あたしが自分の言い分を認めたと思ったのか、さっさと近くのドアを開けると、あたしの手首を掴んで乱暴に引っ張り入れられてしまった。
そしてそのままの勢いで、部屋の奥まで連れ込まれ、あれよあれよというまに、ベッドに向かって放り投げられる。
「ち、ちちちちょっと!何すんのよっ」
じゃなかった。
「門倉千聡…です」
一応、最後に『です』をつける。
こんな言い方をあたしにするってことは、コイツが例の…。
「そ、俺は財前一也。お前の婚約者?もう、飯終わった?」
飯…見ればわかるだろうけど、コースでいうメインだよ。
まだ、この後、パン→フロマージュ(チーズ)→デセール(デザート)と続いて、やっとカフェで終わるわけだから、どう見たってまだまだ道半ば。
まあ、普段は食欲旺盛なあたしもすっかり食べる気が失せていたからいいけど、これってかなり横柄だよね?
「…終わってないけど、まあ、とりあえずいいです」
「ハッキリしねぇな。ま、いいや、来いよ」
「え?ちょっと!」
失礼なことに、人の腕を勝手に掴み、そのままズルズルと外に引きずっていこうとする。
コイツがどういう人かなんてあたしだってわからないけど(あ、婚約者なんだっけ?そう名乗ってたよね)、初対面でいきなりこれはあまりに横暴なのではないだろうか?
いつもは途中退座するな、作法を忘れるなと煩い先生や使用人たちも、あたしの助けを求める目からさりげなく視線を反らして、何気にこの状況を無視している。
まさか、こいつDVとかしちゃう人?!
やっぱりあたし、早まった?!
いくら結婚に夢なんてなかったって、家庭内暴力とかは勘弁して欲しい!
ちょっ!誰か助けてよっ。
どうやら、自分で自分を助けないとこの場はどうにもならないらしい。
力任せに引きずる男の手を、思いっきり振り払い、あたしは男から一歩後退った。
「ちょっと!いきなりなんなのよっ。どこのお坊ちゃまだか知りませんけどね?レディをいきなり引きずって、いったいどこ連れてゆくつもりよっ!?」
「…レディ?」
あたしの頭のてっぺんから足のつま先を眺め下ろす目が、揶揄に満ちている。
あたしだって、自分がレディだなんて口が腐っても思わないけど、この家にいる以上、その自覚を常に持てと言われている。
と、いうことは、この家の人たちだって、あたしにそう対峙するべきだよね?
そうは言うものの…なんていうか、この男、すっごくヤバそうな雰囲気って言うか、間違っても友好的な雰囲気じゃない。
そのくせ、妙にセクシャルっていうか色っぽくてニヤリとした顔も厭らしいっていうよりセクシーで。
…テンパって、まともに気にしてなかったけど、すごい美形ってやつだわ。
正直、こういう味もクソ(失礼)もないような、完璧に整い過ぎた顔ってあたしの好みじゃない。
現に、非人間的で冷たくって、あたしからすれば少しも魅力的じゃなかった。
…まあ、すごい顔小さっ、とか、何このスタイル、これが噂の8等身?とかうっかり感心したくなっちゃうけどそれはまあ、あたしも普通の美的感覚は備わってるってことで。
「お前、生意気。どうせ斜陽の家がうちの威勢を借りたくって送り込んできた娘だろ?俺が右向けつーたら右向いて、左向けつーたら左向けばいいんだよ」
「……」
初対面で『お前』呼ばわりもすごいけど、あまりの俺様発言に思わず黙っちゃったわ。
凄すぎる。
こういう人って本当に世の中に生息してたんだ。
唖然としている間に、あたしが自分の言い分を認めたと思ったのか、さっさと近くのドアを開けると、あたしの手首を掴んで乱暴に引っ張り入れられてしまった。
そしてそのままの勢いで、部屋の奥まで連れ込まれ、あれよあれよというまに、ベッドに向かって放り投げられる。
「ち、ちちちちょっと!何すんのよっ」