Sweet Honey Baby
 箱の中身は幸い?指輪じゃなかった。


 これってアンクレットって言うのかな。


 最初、ブレスレットかと思ったけど、それにしては輪が大きくて、添付されていた保証書!の説明で、それがどうやら足に身に着けるものだと判明した。




 「…うわあ、綺麗ですねぇ」




 自室のソファに座ってお茶をいただきながら、透かし見ていたあたしの背後で声があがった。




 「あ、のりちゃん。お掃除?」

 「いえいえ。実はその…お掃除ではなくって、仔猫の貰い手のことで」

 「あ!見つかったんだ?」

 「はい」



 にっこり笑ってくれて、「やった!」と声が出た。


 前々から、メイドの子たちにも猫を貰ってくれないかと、知り合いを当たってもらっていた。


 たかだか2匹とはいえ、貰い手を探すとなると案外難儀するもので。


 いざとなれば、4月から大学が始まったら友達や教授もあたるつもりだった。


 でも、これで2匹とも貰い手が決まって、一安心だった。




 「良かった~。一ヶ月ほどだけどだいぶ大きくなって、もう世話も楽だからさ」

 「でも、せっかくここまで世話をしてきたのに本当にあげてしまっていいんですか?」




 部屋の隅で二匹ひっ絡まるようにして眠っている仔猫の方へと、のりちゃんが視線を向けた。




 「…まあ、正直寂しい気持ちもあるけど、これまでだって内緒でのりちゃんたちにも見ててもらってたしね」




 一也には自分一人で見る、他の人には迷惑をかけないとは言っていたものの。


 やっぱり家庭教師がビッチリついていて、何かと拘束されていることが多いあたしには生まれたばかりの仔猫は荷が重かった。


 生き物を飼った経験はほとんどなかったしね。


 そのぶん、こののりちゃんやメイドの子たちの協力は不可欠だった。


 おかげで、けっこう仲良くなれたと思う。


 仔猫の持つ縁っていうか、一つの生き物を守るために生まれた連帯感ってやつかな。


 それがあたしにはすっごく嬉しい収穫で、こんな窮屈な生活の中でもささやかな安らぎだった。
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