Sweet Honey Baby
 奴隷…かなりインパクトある言葉に、思わず手の中のアンクレットをマジマジと見てしまう。




 「それで左足につける場合と、右足をつける場合にも意味があって」

 「ええ?そんなのあるんだ」

 「あるんですよ~。ピアスにだってあるじゃないですか」

 「ああ…なんか聞いたことあるかも」




 セクシャリティとかあるいはジンクスとか?




 「で、左足首につけると、恋人や夫がいます、って意味で、独占したい女性に贈るものなんだそうです」




 悪戯っぽいのりちゃんの顔が、あたしの手の中のアンクレットの贈り主を察してる。


 まあ、婚約者のいる身で、他の男からの贈り物持ってたらそりゃヤバイだろうけどさ。


 しかしそれにしても…独占したい女性って。




 「気を付けた方がいいのは、右側につけると、恋人募集中や浮気相手募集ってことになっちゃうらしいです」




 思わずガクッと項垂れ、アンクレットを持ったままの手で額を抑える。


 そんな意味深なもの貰って、どうしたらいいって言うのよ。


 まあ、一也がそこまで知らなかったってことも考えられるけど。


 …ちょっと待てよ。




 「ねえ、靴を女性に買わないってなんか意味あるのかな?」

 「ん~、よく聞くのが、女性に靴を買ってあげるとその靴を履いて逃げる、って聞きますよね」




 なんだか、頭痛がしてきた気がして、手の中のブツをテーブルへと投げ出した。










 「…マジであげたわけ?」

 「お前が言ったんだろ?」




 ひかるの呆れた顔に酒をかけるマネをしてやったら、おおげさにのけ反っている。




 「しかも、靴だけ買ってやらないとかどんだけ~ってやつだよ」




 別にジンクスとかそういうの信じてるってわけでもないんだけどよ。




 「そういえば、昔お前、理沙帆が欲しがってたデザイナーのコレクション買い占めてプレゼントしてやってたよな」




 よけいなことを思い出しやがった崇史へと、ガンをくれてやる。


 けれど、確信犯なこいつがそれで遠慮するはずもなかった。




 「服にコートに一式買ってやって、きわめつけに貴金属。相変わらず重いやつだな、お前」

 「…ほっとけ。いきなり指輪よりいいだろ?」

 「ていうか、一ちゃん、見た目そんななくせに、昔から何気に重たい男だよね」
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