Sweet Honey Baby
 痛いところをつかれて、ソッポを向く。




 「お前の場合は、のめり込みすぎんだよ」

 「まあまあ、そんな風に角突き合わせたら、お酒がまずくなるでしょ?」




 太鼓持ちのひかるが、どっちも立てて俺と崇史の酒をついで回る。




 「俺も最初、似たタイプかなあって思ったけど、見た目はともかくちーちゃんて性格はあんま似てないっぽかったけどな」

 「似てねぇよ」




 理沙帆は逆らわないだけで、面従腹背、本当は俺のことを嫌ってた。


 家の利益の為、自分の本心を隠してずっと俺を心の中で見下してた女だった。


 それがわからないで惚れこんで溺れてたから、今俺は、こいつらにバカにされてんのかもしれねぇな。


 その頃の俺は、こいつらにしてみれば、ずいぶん道化て見えてたことだろう。


 初めての恋に有頂天になって、理沙帆が俺のことなんて、爪の先ほども好きじゃないってことを気が付いてなかった。

 自嘲の笑みが知らないうちに浮かんでたんだろう、話を変えるようにひかるが明るい声をあげる。



 
 「アンクレットか~。いいじゃん、見えないオシャレ!ちーちゃん、あんまりジャラジャラ身に着けるタイプでもないみたいだから、案外あたりだったかもよ!」

 「……うぜぇ」

 「ヨイショするな」




 俺と崇史の言葉が被る。


 それに苦笑するひかるも慣れたものだ。




 「そういう時だけ、気が合うんだから、もうっ。俺も花梨にアンクレット、プレゼントしようかなあ~。おそろいの腕時計にしようと思ったら、嫌だって断られちゃったし」




 相変らずけっこうな扱いされてんな。


 見た目アイドル系のこいつなら引く手あまたなのに、なんで、あんなフツーの女?




 「ちーちゃんに買ってあげたアンクレット、どこで買ったの?一ちゃん、何気にけっこうそういうとこだけセンスいいからさ」

 「…そういうとこだけ、つーのはよけいだろ」




 ぼやく俺にも、平然だ。


 時々、小面憎いこと言う崇史より、コイツの方が腹立つのは気のせいだろうか?




 「そんなん…」

 「あっ!ひかる君っ!」
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