躊躇いと戸惑いの中で
心の温もり
心の温もり
お湯が沸き、キッチンにそのままいる乾君のそばでコーヒーを淹れていた。
「いい匂い」
薬缶でお湯を注ぐそばで、クンクンと鼻を近づける彼は、犬みたいだ。
私は、クスリと彼の無邪気な行動に笑みを漏らす。
なに? 問うように私の顔を窺い見る表情は、益々犬のよう。
動物を飼ったことはないけれど、こんな純粋な瞳で見つめられたら抱き上げて頬ずりしたくなるだろうな。
「今日は、どんなカップ?」
「ん~。どれにしようかな?」
棚のドアをスライドさせて中を覗き、手を伸ばす。
「これなんて、どう?」
ブラックとプラチナのラインが入った、シンプルでモダンなデザインの物を見せる。
「これも高いの?」
あ、そこが引っかかるんだね。
思わず笑ってしまう。
「大丈夫。前のよりは、少し安いから」
笑いながら言うと、少しだけ? なんて、やっぱり恐々とした顔をしていた。