躊躇いと戸惑いの中で
「ごめん……。うそ……」
俯き加減で言葉をこぼすその様子は、嘘と言いながらも行って欲しくないというのが滲み出ている。
何も言えず、私は握られた手の上にもう一方の手を重ねる。
すると、聡太が顔をあげ、私の目を見つめてきた。
その瞳の奥は揺れていて、甘えるように私を求めている。
「沙穂……」
囁く声が心の柔らかい場所に近づき、優しく、だけど強引に進入してくる。
けれど、ここは会社だ。
いつ誰がここへやってくるかわからない、そんな場所で……。
「沙穂」
だけど、もう一度呼ぶ名前に心が揺らぐ。
したくないわけじゃない。
好きだもの。
だけど、だから、解ってほしいのに。
見つめる瞳の切なさに、さすがの私も観念した。
「一度だけね」
断り、私の方からそっと唇を重ねる。
触れた聡太の唇の柔らかさを感じた途端、そのまま自販機にクルリと背中を押し付けられ、強引に舌先が入り込んできた。
「んっ……」
思わず漏れる声。
そっと触れるだけのキスで終わらせるつもりが、激しい欲望をぶつけられた。
抵抗をしてみたけれど、まったく効かない。
それどころか、角度を変えてどんどん攻め立ててくる。
「んんっ」
こんな場所じゃ、ダメだよっ。
必死に抵抗して、聡太の胸に手を押し付けたけれど敵わない。
そのうちに彼の手が腰を抱き、更に引き寄せるように抱きしめてくる。
このままだと、キスだけじゃ済まなくなる。
強引に割って入り込んできた舌先から逃れようとしても、執拗に追いかけられ言葉を発することができない。
そのうちに彼の手が、柔らかな部分に伸びてきた。
ホント、マズイッて!
私は必死になって、何とか彼の体を押しのけた。