躊躇いと戸惑いの中で
愚痴ります。贈ります。
愚痴ります。贈ります。
「おっせーよっ」
店内に入り、いつもの個室に入った途端、河野からお叱りの言葉が飛んできた。
「ごめん、ごめん。出際に、社長に捕まっちゃって」
一年ほど前にオープンした大型店舗の店内について、さっきまで社長から色々とお小言を……。
じゃなくて、ご指導を受けていたのだ。
「新店か?」
「ううん。別の郊外店」
「ああ、内藤店長のところだろ」
「うん。あれ? 河野も何かいわれたの?」
「うん。まぁ。それの件で今日は飲みたいわけだよ、俺は」
なーるほどね。
内藤店長がいる郊外の大型店。
そこは、小田さんのエリア担当になっている。
けれど、小田さんのキャパでは一杯一杯になってきているのか、最近余り目が行き届いていないらしく。
店内の雑さが目立ってきている上に、バックヤードの管理もあまりいいとは言えない。
新しく入った新人教育も、うまくいっていない様子だった。
「明日にでも、店舗に行って見て来なきゃならない」
「河野が?」
「そ。俺が」
そう言って、河野がジョッキのビールを一気に飲み干す。
「小田さんは、どうしてるの?」
「俺の近郊店と、交換」
「交換て。そんな安易な」
「安易でも何でも、社長が決めたらやらざるを得ない」
「また河野の負担が増えるってこと?」
ふーッ。と私が溜息をつくと、俺にも吐かせてくれ。と河野も深く息を吐き出した。
「まー、次のボーナスに期待をするさ」
諦めたように呟くと、ビールのお代わりを注文する。