躊躇いと戸惑いの中で

社に着いて、真っ直ぐ席には戻らず、ＰＯＰの様子伺いに乾君と一緒にフロアに入っていった。

「お疲れ様」

プリンターの前で腕を組んでいる梶原君に声をかけると、疲れた顔が私を睨みつけるようにして見てくる。
今日も、メチャクチャ険しい顔つきが恐いです。

「あと三日だけど、順調？」

私が問いかけると、更に目つきが険しくなる。

「だから、誰に言ってる」

問題など少しもないというように、言い切られた。
だけど、その疲れた姿を見れば、かなり無理をしているのは明らかだ。
あとで、ドリンク剤でも差し入れしよう。

新店オープンまであと三日という事は、梶原君のここでの仕事もあとわずかということ。
目つきはかなり恐いけれど、責任感の面では、とてもしっかりとした人だったな。
あと少し、宜しくお願いしますよ。

軽く頭を下げて、ＰＯＰフロアをあとにした。
コンビニ袋をぶら下げてフロアへ戻ろうと廊下を歩いていると、本日一番会いたくない人物に遭遇してしまった。
河野の姿を目にした途端、驚きと共に思わず半歩退いてしまう。

「あからさま過ぎるだろ」

そんな私の行動を見て、河野が溜息と共に悲しげな目をした。

だって。
つい。

今自分がどんな顔をしているのか判らないけれど、多分河野にしてみればあまりいいとは思えない表情を浮かべているとは思う。