君がいるから

ありがとう

プルルル プルルル

電話がなっている。

今日は、平日だ。

僕は、学校を休んでいる。

昨日の彼女の姿が僕を苦しめる。

動く気にもならない…

だが、いま家には僕しかいない。

両親は、仕事だ。

仕方なく電話をとる。

「もしもし…」

「あのう、水沢さんのお宅でしょうか」

「はい」

聞いたことのある声だ。

どこで聞いたのだろう?

少しの沈黙が訪れる。

沈黙は、長くは続かない…

「私は、海さんがお付き合いしていた少女の母です。海さんには娘がとてもお世話になりました。図々しいかもしれませんが海さんに伝えてもらいたいことがあります。あのこは、最後まであなたに、ありがとうとといっていたと…」

電話越しに鼻をすする音が聞こえる。

そうだ、この声は病院で聞いたことがある…

彼女こ母親の声だ…

「彼女は…」

声がかすれる。

聞かなくてもこたえはしっている。

「私の娘はきょうの朝安らかに眠りにつきました…」

最後の声は震えていた。

彼女はもういない…

「伝えておきます…」

「ありがとうございます」

電話をきったあと、泣きじゃくり、自分の弱さを呪った…

声はかすれ、目元ははれ目は気がついた頃には充血していた。

彼女の残した温もりを探すようにいつの間にか彼女の手紙を手にしていた。

かいへ

ひどいことをいってごめんなさい
この手紙を読んでるってことは私に何かあったんだよね。
ごめんね
あの日、余命が残りわずかなのを知った。
あなたが離れるのが怖かった。
そんなことないのにね。
でも一番怖かったのは、あなたがこれ以上苦しむこと。
それを知ったとき、あなたは今以上に苦しむと思ったから突き放した
せっかく最後までいるっていってくれたのにごめんなさい。

私は、あなたがいたから笑えているよ。
楽しい時間をありがとう。
好きです
もっと許されるならあなたといたかった


あなたの
幸せを願う者より

手紙には涙のあとがあった。

いくつもの涙のあと
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