アイツと共に、未来へ
一人で感傷に浸っていると、オギワラが俺を呼ぶ声がした。

「伊織くーん、パン食べてたけど、ご飯どのくらい盛る?」

俺は自分の腹と相談した。パンは食べたが、まだゆとりがあったので、普通盛りでと伝えた。しばらく待っているとオギワラが部屋のちゃぶ台に食事を運んで来てくれた。白いごはんや野菜がたくさん入った味噌汁、山盛りの千切りキャベツと焼いたウィンナー。家族が作る昼飯はこういったものなのかとしみじみ思った。寮の食事もうまかったけど、ウィンナーを焼いただけという手抜き感にかえって暖かさを感じた。そう思いながら「家族の味」を噛みしめた。

「どうしたの?大丈夫?」

俺の向かい側で同じものを食べていたオギワラの声にハッとすると、自分の目に涙が少し浮かんでいた。自分でも驚いた。俺はこんなにも「家族」に恋焦がれていたのかと。

「いや、なんでも・・・。ちょっと。」

ごまかそうとした。だけど、ごまかすのは違う気がして素直な気持ちをオギワラに伝えた。

「俺の持っていないものがここに有って、ちょっと羨ましくなった・・・」

「そっか・・・」

オギワラの言葉は暖かかった。深入りする訳でもなく、拒絶する訳でもなくただ俺の言葉を受け入れてくれた。それが嬉しかった。
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