アイツと共に、未来へ
サッカー部の練習は意外と楽しかった。炎天下の中で運動するのはキツかったが、体を動かしてすっきりした気持

ちになった。コウダイの言った通り、サッカー部の他の一年生ともすぐに打ち解けることができた。二人一組に

なって行うパス練習に付き合った後、試合形式の練習にも参加させてもらった。

練習が終わった後俺はコウダイからも、ほかのサッカー部の一年生からも、コーチからもしきりに入部を進められ

た。だが、俺にその気はない。こういった運動はたまにだから楽しいのだ。毎日練習するとなるとキツいだけだろ

う。それにほとんど教室に行っていない俺が入部しても部の評判が下がるだけだ。学校に行かずに自分でその責任

を負うのは構わないが、他のヤツに迷惑かけるのは御免だった。

練習が終わると、サッカー部の一人のタケヒトが蛇口に長いホースを差し込んだ。蛇口をひねって水を出し、みん

なにかけた。みんなわれ先にと水をかけられに行く。風呂の時間は夜なのでここでできる限り水を浴びないと数時

間汗でベタついた体で過ごすことになる。それを避けるためにできるだけ汚れを落とすのだ。服は当然ビショビ

ショになってしまうが、みんな着替えとビニール袋を持ってきていた。俺は用意していなかったのでみんなが水を

浴びている間に着替えとビニール袋、タオルを急いで寮から持ってきた。俺も他のヤツらと同じように水を浴び、

別の蛇口で頭を洗った。水は冷たかったが、気温が暑かったのでとても気持ち良かった。

「明日も来いよ」

部屋に戻るときに、サッカー部のヤツらにそう声をかけられたが明日はきっと来ないだろう。昨日と今日とで丸二

日間、河川敷に行っていない。そろそろ行きたくなってきている。あの場所は特別好きな場所だから。それは草の

匂いが、川の流れが、釣りをする人々を見ると心が落ち着くからで特に『アイツ』を意識していたわけではなかっ

た・・・。
< 16 / 24 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop