アイツと共に、未来へ
#1
今年もまた、セミの鳴き声が聴こえてくるようになった。鼻には草の匂いが香る。入道雲が広がる青空の下、俺は今、河川敷にいた。


俺は今年の4月に全寮制の中学校に入学した。名門私立とかいうヤツだ。――だが、ほとんど教室には足を運ん
でいなかった。いじめられている訳ではない。他の寮生ともクラスメイトともうまくいっている。みんなたまにしか教室に来ない俺を暖かく迎えてくれる。だけど、俺は学校へは行かない。もうかれこれ3ヵ月間、俺は河川敷に通っている。


平日に子どもが学校にも行かずにこんな所にいるんだ。当然、行き交う人々は訝しげに俺を見ていた。中には直接説教してくる人もいた。けれど、最近はみんな俺の存在に慣れたのか俺に構ってくる奴は少なくなっていた。


俺は河川敷が好きだった。流れていく河を見ていると心が落ち着いた。


幾らか時間が流れ、腹が鳴った。体が昼時であることを告げていた。俺は持っていたパンのかじり始めた。寮の朝食として出たものをくすねておいた。パンによって口の中の水分が持っていかれたので、ペットボトルに汲んできた水道水を飲む。パンをかじり、水を飲む。それを数回交互に繰り返すと俺の短い昼食時間は終わった。パンを食べ終わり、軽くまどろみながら河を眺めた。


ふと、上を見上げると雨が降りそうな空模様だった。

「チッ」

俺は今日の天気を呪った。びしょびしょになるのが嫌だったので、俺は仕方なく学校に行くことにした。
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