アイツと共に、未来へ
しばらく貸し切りバスに揺られ、着いた先はとある大学のキャンパスだった。
大学夏休み中なのだろう、人の姿は練習中のサークルメンバー以外ほとんど見当たらなかった。
夏休み中の大学の大学の様子を眺めながら講義室に入った。
大学の講義室というとテレビでよく見るような大きな空間を想像していたのだが、合宿の参加人数――30人ほどだろうか――でそれに見合った中学の教室とあまり変わらなかった。長机に二人ずつ腰かけ、テキストが配られた。オレはぼんやりと筆箱を鞄から取り出した。まもなく始まった一限目の講義を聞きながら、ふとオギワラのことを思い浮かべた。
彼女は数日間、ひとりで過ごすのだろうか?オレが彼女のことを嫌いになったから、家に行かないのだと思うだろうか?彼女にだって一緒に過ごす友達ぐらいいるだろう、オレの存在なんて彼女にとって大した存在じゃないんだ。思い上がるな。そう思いながらもあの時抱きしめた華奢な彼女の感触が思い出された。寂しさで折れてしまいそうな細さを思い出してオレは不安になった。
スマホを持っていればメールを送って急に行けなくなった事情を説明できるのに。残念ながらオレはスマホは持ってない。まあ持っている奴らも合宿が始まる時に強制的に預けさせられていたから、今はどのみち連絡できないけど。そもそも、連絡先知らねーし。
ごめんなオギワラ。別にお前のこと嫌いになったわけじゃないんだ。合宿が終わったらすぐに会いに行くから!!オギワラにテレパシー受信機能がついている訳ではないから、伝わらない想いだけど、彼女に謝らずにはいられなかった。
オギワラのことを考えているといつの間にか講義は終わっていた。あの日河川敷で偶然出会っただけなのに彼女の優しさに触れるためにオギワラの家に通うのが何よりの楽しみになっていた。かっこつけてか、オレは彼女に同情してオギワラの家に通っていたと思っていたけど、彼女がオレに求めていたように、オレも彼女に求めていたんだ。オレも寂しかったんだ。ふたりで心の隙間をうめていた。今までは仮の詰め物だったけど、これからふたりで本物に心を満たしていこうとそう思った。この気持ちは、きっと「恋」と呼ばれるものなのだろう。
合宿は二泊三日の日程だったが、オギワラに会いたい想いが募りすぎてすごくすごく長い時間に感じられた。会いたかった、抱きしめたかった、抱きしめられたかった。オレの中で熱くなっている想いを聴いてほしかった。
講義の内容は夏休み前、ほとんど学校に行っていないオレには意味すら分からなくて、とても真剣に受ける気にはなれなかった。だから、余計に脳裏で浮かんだのはオギワラだった。彼女の顔、声、作ってくれた料理、柔軟剤の香り。時間が経つにつれて強くなってくる「好き」という思い。
大学夏休み中なのだろう、人の姿は練習中のサークルメンバー以外ほとんど見当たらなかった。
夏休み中の大学の大学の様子を眺めながら講義室に入った。
大学の講義室というとテレビでよく見るような大きな空間を想像していたのだが、合宿の参加人数――30人ほどだろうか――でそれに見合った中学の教室とあまり変わらなかった。長机に二人ずつ腰かけ、テキストが配られた。オレはぼんやりと筆箱を鞄から取り出した。まもなく始まった一限目の講義を聞きながら、ふとオギワラのことを思い浮かべた。
彼女は数日間、ひとりで過ごすのだろうか?オレが彼女のことを嫌いになったから、家に行かないのだと思うだろうか?彼女にだって一緒に過ごす友達ぐらいいるだろう、オレの存在なんて彼女にとって大した存在じゃないんだ。思い上がるな。そう思いながらもあの時抱きしめた華奢な彼女の感触が思い出された。寂しさで折れてしまいそうな細さを思い出してオレは不安になった。
スマホを持っていればメールを送って急に行けなくなった事情を説明できるのに。残念ながらオレはスマホは持ってない。まあ持っている奴らも合宿が始まる時に強制的に預けさせられていたから、今はどのみち連絡できないけど。そもそも、連絡先知らねーし。
ごめんなオギワラ。別にお前のこと嫌いになったわけじゃないんだ。合宿が終わったらすぐに会いに行くから!!オギワラにテレパシー受信機能がついている訳ではないから、伝わらない想いだけど、彼女に謝らずにはいられなかった。
オギワラのことを考えているといつの間にか講義は終わっていた。あの日河川敷で偶然出会っただけなのに彼女の優しさに触れるためにオギワラの家に通うのが何よりの楽しみになっていた。かっこつけてか、オレは彼女に同情してオギワラの家に通っていたと思っていたけど、彼女がオレに求めていたように、オレも彼女に求めていたんだ。オレも寂しかったんだ。ふたりで心の隙間をうめていた。今までは仮の詰め物だったけど、これからふたりで本物に心を満たしていこうとそう思った。この気持ちは、きっと「恋」と呼ばれるものなのだろう。
合宿は二泊三日の日程だったが、オギワラに会いたい想いが募りすぎてすごくすごく長い時間に感じられた。会いたかった、抱きしめたかった、抱きしめられたかった。オレの中で熱くなっている想いを聴いてほしかった。
講義の内容は夏休み前、ほとんど学校に行っていないオレには意味すら分からなくて、とても真剣に受ける気にはなれなかった。だから、余計に脳裏で浮かんだのはオギワラだった。彼女の顔、声、作ってくれた料理、柔軟剤の香り。時間が経つにつれて強くなってくる「好き」という思い。