アイツと共に、未来へ
 午後の授業と終礼の後、俺は担任のヨシカワに生徒指導室に呼ばれた。広いとは言えない部屋に長机が一つ、その長机を挟むように向かい合ってパイプイスが二つ。――もし、暴れるヤンキーとかがいたらこの狭い部屋だと危ないんじゃね?という疑問を持ちながら、俺はヨシカワに促されるままに片側の椅子に腰かけた。ヨシカワの40代から50代ぐらいのベテラン男性教師だ。
 

「おまえ、とりあえず学校に来い」


ヨシカワは眉間に皺を寄せ深刻そうに言った。

 「・・・。俺に不満があるならとっとと公立にでも転校させりゃいいだろ!!」


つい、感情に任せて乱暴に言葉を発してしまったので若干反省した。


「別に、学校側は安田を転校させたい訳じゃない。安田 の悪いところは学校に来んことだけやろ。安田は万

引きもせん、喧嘩もせん。授業中にも黙って座っとる。 中学は義務教育やから別に学校に来んだけで安田み

たいな力ある子どもを放り出したい訳じゃない」

暖かいのに熱を含んでいる声で、諭すような言葉だった。

「いじめられてるのか?」


「違う!!学校に来たくないだけだ!!」

俺は慌てて、首を横に振りながら言った。ヨシカワはそんな俺の様子を見て、とりあえずほっとしたようだった。

「何かあるならいつでも相談しに来い」

「とりあえず学校に来い!なっ?今日は解散」

しんみりした空気を変えようとするように、明るくそう言って、ヨシカワは生徒指導室から出て行った。
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