アイツと共に、未来へ
女が去った後、気が抜けたのか腹が減ったのでいつものパンをかじり、ペットボトルに入れてきた水を飲んだ。青空を流れていく雲と同じように穏やかに時間が過ぎていく。気温は汗でビショビショになるほど暑かったが、それでも心地よかった。だが、その直後に穏やかさが打ち消された。


さっきの女が再び現れた。一旦、家に帰ったのだろう。Tシャツとジーパンに着替えていた。女は手を振りながら近づいてきて、持っていたコンビニの袋からペットボトルのスポーツドリンクを取り出し、差し出した。


「あげる。」

そう言われたので受け取った。買ったばかりらしく手に伝わった冷たさが気持ちよかった。蓋を開けて喉に流し込む。体中に液体が染み渡る感じがした。あっという間に飲み干してしまった。

「ありがとう。」

俺ははっとしてお礼を言った。

「いーのいーの。気にしないで。」

女は笑顔だった。そしてこう続けた。

「こんな暑いところにいるくらいなら私の家に来ない?熱中症は防げるし、大した物は出せないけどパンだけより

は栄養のあるもの食べさせてあげられるし。私の家すぐ近くだし。」

確かにパンだけでは、あまり腹の足しにならなかった。だが、高校生とはいえ知らないヤツについていくのはどうかと思った。というか・・・

「学校行けって言わねえのかよ!?」

あまりの意外さに声をあげた。

「学校、なんかの事情で行きたくないんでしょ?だったら、赤の他人の私が無理やり学校に行くようにする義理はないわ。言われたいの?」

女はなんともないような口調だった。

「昼メシには誘うのにか?」

俺はからかうようにニヤリとしながら言った。

「それもそうだけどー」

女は不満そうにふくれた。悪いヤツじゃなさそうだし、断るのも悪い気がして俺は女の家に行くことにした。
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