妄想女と浮気男
通うのが面倒くさいわけじゃない。蒼太の世話をするのが面倒くさいのだ。


蒼太と結婚?


ありえない。


私の未来の旦那様は充君よ。


「遠慮しとく」私は素っ気なく言った。


「え~っ、僕、璃子ちゃん大好きなのにぃ」


そう言って口を尖らせる蒼太。


「私、あんたみたいな女好き、大嫌い」


たった一人の友達といっても、私にとって蒼太は、別に『大事な存在』ではない。


私達の関係は腐れ縁のようなものだ。


まぁ、『大嫌い』というのは嘘だが。


「酷いよ、酷いよ……。せっかく璃子ちゃんを追いかけて、この市に引っ越してきたのに……」


そうだったわね。

でも、得意げに言ってるけど、同じ市に引っ越してくるとか……


ストーカーみたいよ。

こわい、こわい。


まぁ、でも、蒼太の私に対する想いが恋愛感情じゃないのはわかっている。


「そんなにいじけないの。しょうがないから、今日だけ掃除とかしてあげるわ」


なんだかんだ言っても私は、蒼太を放っておけないのかもしれない。


「ホント?なんか今日の璃子ちゃん、優しいね」


蒼太は笑顔になった。
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