妄想女と浮気男
視界が揺れる。


私は頭を押さえながら、倒れるようにしゃがみ込んだ。


日射病だろうか。


身体が水分を欲している。


しかし、立ち上がれそうにない……。


その時だった。


「大丈夫?」


優しい声がした。


私は駐車場の方を見た。


声の主は私の近くまで来ていた。


若い男だ。

長めの髪をアッシュ系に染めている。

耳にはたくさんのピアス。両耳合わせて七個ぐらいかしら。


「……大丈夫です……」私は伏し目がちに言った。


「あんまり大丈夫そうじゃないよ」


「……ただの軽い日射病です……」


「日射病?!あっ、俺の車で休みなよ!立てる?」


「……立てないかも……」


私がそう言うと、男は私の日傘を持ち、しゃがみ込んだ。


私のすぐ隣にだ。


凄く近い……。


爽やかないい香りがする。


「肩、かしてあげるよ」


「……」


心拍数が上がる。


自分の頬が紅潮していくのがわかる。


「早く」


優しい笑顔で急かされた私は、戸惑いながらも男の肩に抱きついた。
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