妄想女と浮気男
車内に流れる音楽がR&Bからロックに変わった。
某ヴィジュアル系バンドのメジャーデビュー曲だ。
「……私、このバンド好き。充君も好きなの?」
大きめのサングラスをして、軽自動車を運転している充君に言った。
「うん!好きだよ!一緒だね」
充君は前を見たまま言った。
年も一緒で好きなバンドも一緒……。
もしかして私達の出会いって……
運命?
でも、時間が私達を引き離す……。
私の自宅が見えてきた。
木造二階建ての古いアパートだ。
もう着いちゃった……。
あっという間だったわ……。
「……ここでいいよ……」
名残惜しいが、アパートの近くで私はそう言った。
「部屋まで一人で歩ける?」
充君は車を脇に寄せてとめると、私に尋ねた。
「歩けるよ……たぶん」
「心配だから、部屋までついていくよ!」
部屋……
片付いてたかしら……?
散らかってるかも。
そんな部屋、充君に見せられないわ。
「……ありがとう。でも、ホントに大丈夫だよ」