妄想女と浮気男
「充君、ごめんね。今日は用事があるんだったわ……」


「えっ……」


「そんなに寂しがらないで。またいつでも会えるわ。……私達、両想いなんだから……」


私は照れくさくて、少し俯いた。


「……は?両想い?」


充君はなぜか、怪訝な声で呟いた。


そして、握っていた私の手をすっと離した。


私は充君を見た。


「……わかったよ。じゃあね、璃子」


気のせいかもしれないが、充君の笑顔は少し引きつっていた。


充君、どうしたのかしら?




そっかぁ、わかったわ。




充君も照れくさいのね。


可愛い人……。


「じゃあまたね、充君……」


私はそう言うと、充君の車から降りた。


私がドアを閉めると、車はすぐに走り出した。


あっ、連絡先を交換してないわ。


恋人同士になったのに連絡先を聞き忘れるなんて、充君はうっかりさんね。


まぁ、いいわ。


携帯電話なんて使わなくても、私達はいつでも繋がってる。


充君の車が見えなくなっても、私は同じ方向を見つめていた。


充君……


愛してるわ。


ずっと、ずっと、一緒だよ。
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