妄想女と浮気男
翌日、昼食を終えた私はドレッサーの前に座って出かける支度をしていた。
ヘアーブラシで長い黒髪をとかす。
化粧は好きじゃないけど、日焼けしないようにファンデーションだけはちゃんと塗るわ。
「できた」
私は鏡の中の自分を見つめながら言った。
そして、椅子から立ち上がった。
今から男友達の家に行く。
電車で二駅行って、駅からすぐの場所だ。
もちろん浮気なんかじゃない。
私が愛しているのは充君だけ。
相変わらず広いリビングだ。
私はそう思いながら、黒のレザーソファーに腰を下ろした。
ここは高級マンションの一室だ。
三十四階建ての三十四階。
つまり最上階だ。
「璃子ちゃん、飲み物これでいい?」
間宮蒼太(まみやそうた)は、瓶のペリエを二本持って、キッチンからやって来た。
「うん」
「はい、どうぞ」
「ありがとう」
私がペリエを一本受け取ると、蒼太はカーペットの上に腰を下ろした。