妄想女と浮気男
そして、にこにこしながら、ローテーブルの上に置いてある紙袋を開けた。


私が手土産に持ってきたドーナツだ。


「わっ、二個もある!璃子ちゃん、ホントに食べないの?」


「うん」


昼食を食べてからまださほど時間が経っていないので、食べる気がしなかった。


「わ~い!いただきます!」


蒼太は両手にドーナツを持った。


口元にチョコをつけながらドーナツを頬張る蒼太を、なんとなく見つめる。


子供みたい。


色白で若干丸い顔。

くりっとした大きな目。

顔も童顔だ。


十代に見えるが、蒼太は私と同い年だ。


私達は小学校と中学校が同じだった。


蒼太を見るのに飽きた私は、周りを見回す。


服や雑誌などが散らかっている。


意地悪な姑のように目を凝らしてフローリングやカーペットを見ると、埃などが気になった。


今まではいつも綺麗に掃除されていた。

蒼太は家政婦を雇っていたから。

たしか、わりと若い女性だったわね。


「蒼太、家政婦さん辞めちゃったの?」


私は二個目のドーナツを食べようとしていた蒼太に尋ねた。
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