呪いの着メロ
「でも、なんでそんな三嶋が霧谷の近くにいながら、すぐに襲わなかったんだろうな」

『・・・・・・・・・・』

「あ、いや、別に霧谷が襲われればいいって意味じゃなくて、その、普通、逃がした相手が生きていると分かったらもう一度襲うだろうって素朴な疑問なんだけど・・・・・・」

 さすがに今のは失礼だったかな。

 と、思ったが、意外にも霧谷の声はそんな感じを受けなかった。

『これは私の推測だけど・・・・・・私の姿を見て、襲いにくくなったんじゃないのかな?』

 眼帯か、確かに物語の女の子・・・・・・つまり、それが三嶋だとしたらかつての自分と霧谷を重ねていたってことか。

 でも、多分、それだけじゃない気がする。

『だからかもしれないけど、今日、学校から帰るとき、三嶋さんは私に「今夜、午前零時にあの本を持っている人にイタズラするんだ」って、予告したのかも・・・・・・』

 イタズラって、レベルじゃなかったけどな。

『最初は何のことか分からなかったけど、嫌な予感と共に昔のことを思い出した・・・・・・だからあなたに電話したの』

「それで、あの歌はなんだ?」

『あれは・・・・・・』

 俺が尋ねると、霧谷が急に口篭った。何かもごもごと言うのを躊躇っている。

『あ、あれは、私が作詞してみた。本を全部読んで、改めて考えてみたの。彼女が自殺した本当の理由。確かに自分から本の世界を奪われたことを苦にかもしれない。でも、その根源はなんだと思う?』

 それを問われた時、俺はハッとした。

 あらすじをザッと聞いた俺でもそれは知っている。

 女の子はいつか転校生の書いた小説のイメージになる歌を作りたいと思っていた。

 だが、その歌詞を創り上げる前に、本の世界を奪われてしまった。

 転校生の書いた小説のイメージになる歌も作れない。

 一番やりたい夢が潰れたから女の子は自ら命を絶った。

「そういうことか・・・・・・」

 なんか悲しい。

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