呪いの着メロ
夕方の帰り道を四人揃って歩いている様はまるで仲良し四人組のようだ。

 けど、そうなると、親睦を深めるという担任の思惑通りとなるわけだ。

 少し癪な気分だ。といっても、悪くはないけどな。

 特に康介と三嶋なんて意気投合して仲良くペチャクチャ喋っている。

 黙っているのも暇だから、俺は隣の霧谷に話しかけてみた。

「なぁ、重くないわけ?」

 霧谷の手提げ鞄は図書室で借りてきた本でパンパンに膨れ上がっている。相当な重量になっているはずだ。

「……大丈夫」

「持ってやろうか?」

「……平気。教科書は教室に置いてきたから」

「……意外とちゃっかりしてるのね」

 霧谷の意外な一面に驚いたところで話題が尽きてしまった。

 さて、どうするかな・・・・・・といっても、まさかその眼帯のことを訊くわけにもいかないし……

 遠回しに訊いてみようか。

「片目だけで、見え辛くないか?」

「もう慣れたわ」

「長かったけ?」

「入学する前……」

「そっか……」

 やべっ、早くもネタが尽き始めたか……

 と、思ったら、霧谷自身が予想外にも眼帯の経緯を話し始めた。

「……片目だけ見えないの」

「ん?」

「……何か原因なのか、よく覚えてない。何が起きて見えなくなったのか覚えてないけど、ある時から見えなくなった」

「医者には行ったのか?」

「行った。原因不明……」

 自分からこんなこと話すなんて……ひょっとして、霧谷って、実は友達っていうのが欲しかったのか?

「こらーーーっ! そこ、何熱々ストロベリートークしてんのぉ!?」

 三嶋。これのどこが熱々に見えるんだ? つーか、そのストロベリートークって何か久しぶりに聞いたぞ。

「お前は康介と熱々ストロベリートークしてたんじゃないのかよ?」

「ふふん、恭華イヤーは地獄耳なのよ! 班長くんが霧谷さんの秘密を探ろうとしてたのを聞き逃さなかったわ!」

「人聞きの悪いこと言うな!」

 というか、そのフレーズもかなり久しぶりに聞いた気がする。お前、高校生じゃないだろう?

 三嶋のせいで、霧谷の話がうやむやに終わってしまったまま俺達はそれぞれの帰路に別れた。

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