私少年漫画家してます
篠崎京香、高校2年生。
昔から兄の影響で少女漫画ではなく少年漫画ばかりを読んでいた私。
周りが恋愛トークに夢中になり始めるなか、男子たちよりも少年漫画の熱い戦いが好きだった。
何かを守るために戦う彼らが誰よりもかっこいいって思ってた。
両親はデザイナーで昔から絵にも興味があった私は中2の時思いきって漫画をひとつ書き上げた。
もちろん応募する気なんてなかったんだけどそれを見つけた兄が勝手に応募。
気づいたころにはもうとっくに私の原稿は提出され、さらには賞に入っていてとんとん拍子で連載。
高2の今では高校生漫画家を続けている。
絵が繊細だと言われる私の漫画。そりゃあ一応とはいえ女子高生が書いてるわけだし?
それでも少女漫画みたいなあの細かさは絶対に無理だけど。
両親は特に反対もなく、友達やクラスメイト、先生には明かしていないこの仕事。
恋愛よりも何よりも私は今この仕事が楽しい。
漫画を書くチャンスを与えられている今のうちに精いっぱい楽しみたい。
「川岸さんお疲れさまでした。ほんといつもすみません」
「まぁこれが仕事だからね。でも今回は比較的早くて助かったよ。」
川岸さんはデビューからずっとお世話になっている。お兄ちゃんに少しだけ似ていて、一緒にいて安心するし、悩みとかも聞いてくれる、そんな人。
「僕はこれが仕事だからいいけど京香ちゃんは違うでしょ?ちゃんと学校にも行くんだよ。」
「締め切り前はしょうがないんですよー。明日は行きます」
「漫画もいいけど、女子高生らしいこともしないと。そういうのが漫画のいい素材なんだよ。彼氏とかいるの?」
「私が書いてるのは非現実でバトル。こてこての少年漫画ですよー?女子高生体験談はいらないです!」
川岸さんは私が仕事一筋なのをあまりいい顔をしない。
確かに彼氏はいないし、好きなひともいない。でも学校にいけば男子とは少年漫画で語り合うし、もちろん女の子の友達だっている。
これだって立派に“青春”じゃない。
「今しかできないことだってあるんだよ?」
「私にとってそれは漫画を書くことですよ。川岸さんお仕事あるんですよね?私もお昼寝したいんでそろそろいーじゃないですか。」
この人のやっかいなところはそういう所だ。
いや、心配してくれてるからこそなんだろうけどさ。
別に私は恋愛をしたいなんて思ったことはない。