私少年漫画家してます




学校から帰ってきて、すぐにネームに取りかかる。
学校だって行ったし、これはネームだ。
てきとーな紙にシャーペンでゆるゆるにかいてる。頭で考えてたものを大体の構図でまとめる作業。
漫画を書く上でとても大切な作業。

でも漫画を書いてるわけじゃないから、こじつけだけど川岸さんとの約束は破ってない。


もちろんアシスタントさんもいないし、漫画を書くときはテレビも音楽もなしの環境でやる私の部屋には電話の音は大きくなり響く。

案の定、そばにおいてあった私の携帯がなって驚いて手元が揺れた。







「……もしもし」


『あ、京香ちゃん?今平気?』









夜11時を過ぎた時間、たぶん川岸さんはまだ会社なんだろう。
少し声が掠れてる。ほんと編集の仕事って大変そう。







「平気ですけど、どうしたんですか?締め切りの次の日に電話なんて川岸さんらしくないなぁ」


『ちょっと、話があってさ。明日学校終わり空いてる?6時に編集部来てほしいんだけど。』








他の人は知らないけれど、基本私は編集部なんて訪れたことほとんどない。
賞をとって打ち合わせたとき行ったくらいで連載が始まってからは基本川岸さんがうちまで来てくれる。
時間指定までして私からいくのは不思議な感じ。







「全然大丈夫ですけど、打ち合わせですか?」



『いや、会ってほしい人がいるんだ。』




「会ってほしい人?」









なんだろう。ますます不思議。
え、編集長とか?なに?なんか私したの?
呼び出されるとかやばいんじゃ…







『京香ちゃん、君の漫画には決定的に足りないことがあるんだ』










ぼそっと小さい声で彼はそう言った。
電話を切る前に言った彼の一言が耳に残る。

え、だからほんとになんですか?










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