私少年漫画家してます



ヒロ、イン…?
少し考えたあとすぐ川岸さんに反抗する。私の漫画には一人女の子が出てくる。



ゆりなをモデルにした、あんまり出てこないけど私の中ではヒロイン位置にいる女の子。
もちろん彼女には漫画を書いてることすらいってないから、モデルなんですよなんて言ってないけどゆりなを知っている人が見ればわかるんじゃないかってぐらい性格もビジュアルも寄せてる。
名前もゆり、だったりする。





「え、川岸さん。ヒロインいるじゃないですか。ゆりちゃんですよ?」


「男の俺からして魅力的なヒロインとは思えないんだよ。それにまず主人公に恋してないし、ほかに男いそうな雰囲気だし、なによりまず出番が少ない。」





川岸さん仕事中なのに一人称俺に戻ってる。
それにモデルの子がいるのに何て言ういいぐさなのでしょう。ごめんねゆりな。
まぁ私が女の子書くのとか動かすのめんどくさくて出さないのも悪いんだけどさ。
ちょっと男好きだけどあなたは魅力的な女の子だよ…私からみたら。





「だとしてもなんでひまわりの編集部に…」



「僕の妻がここで働いていてね。」





いや、ちょ、奥さんいるとか初耳!プライベートを話すのをいやがる人なのに自分から言ったからちょっとびっくり。
今まで、こっちのことは根掘り葉掘り聞こうとするくせにそっちは何も教えてくれないんだもん。




「京香ちゃんに少女漫画に触れてもらえば魅力的な男子が好きな女の子像をつかんでもらえるかなって思ってさ。
君、女子なのにそーいうの苦手そうだし。で、まぁ妻に相談したらOKもらえたからこれからちょっと打ち合わせしてもらうから。」




「奥さんと打合せするんですか?」




「いや、妻が担当してる漫画家さんと。たぶん京香ちゃんのことだから知らないと思うけど桜 真由理先生っていう人気漫画家さんだよ。」






名前からしてもう可愛いし、まずあんなキラキラな少女漫画をかける時点でふわふわな女の子なんだろうなって思う。
まぁ、ペンネームってこともありえるけど。わたしだって流石に本名で活動するわけにはいかなくて、龍崎 陸っていうなんともごっついペンネームで活動してる。




少年漫画界において実は女性です、ってパターンは意外に多い。
もちろん主流は男性だけど、絵がきれいだな、って思ってると女性だったり、私服こだわるなーって思ってると女性だったりね。



私もこの世界に入ってから何人かのお姉さんの先輩方に会う機会もあった。
え、この人ほんとにあんな筋肉書いてんの?って思うぐらいモデルさんみたいな人もいた。








「じゃあ、ここに座っててね。今、妻と桜先生を呼んでくるよ。」



「はあい。」








打ち合わせができるようにたくさん区切られたスペースのなかで四人テーブルのものを選び、私は座った。
川岸さんはそう言ったあと編集部の方に歩いていった。









< 7 / 9 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop