私少年漫画家してます
周りでは他の漫画家さんが打ち合わせをしていて、声が聞こえてくる。
デビュー間際だったり、持ち込みだったりして結構ひどいことを言われることもある。実際私の隣のスペースの人は、こっちに漏れてくるのが涙声のような気もする。
まぁ、厳しいけれどこれがこの業界だからなぁ。
「ねぇ、」
「へ?」
テーブルに肘をついてそんなことを考えていると、上から少し低めで、でもどことなくだるそうな声がきこえてきた。
その声につられるようにして私は上を向く。
「ここ、これから俺が使うから。退いてもらえない?」
…何、この人。
座ったまま顔を上げてるから、そのぶんもあるんだけど少し背が高めなようで威圧感が半端ない。
怒っているわけでもなくすごく、無表情。
「私、ここで座って待ってるように言われたんです。だから、無理です。他、空いてるじゃないですか。」
「俺も、ここで待ってるように言われたんだけど。」
抑揚がない声で、淡々と彼は話す。
ちょっといらいらして、しっかりその彼の方に顔を向けた。
黒いTシャツ、白のパンツ、黒のスニーカー。まぁ制服の私がなにも言えないけどなんともなにも考えてない感じの服装。
まぁ、この人の顔がキリッとしてて俗に言うイケメン、だから似合うんだけどさ。
くやしいけど。
って、あれこの人…
「王子………?」
「なんで、その呼び方。あ、でもその制服、」
「おまたせ京香ちゃんごめんねーこの人が妻の…」
「夏目さん、」
「あら、江波くん。来てたのね今日は実感ぴったり。」
上から順に、川岸さん、王子もとい江波先輩、そして川岸さんの奥さんだと言うきれいな髪を一つに束ねている夏目さん。
江波先輩は無表情に変わりがないから、目に見えてこの展開についていけていないのは私だけだと思う。
ここから私たちの奇妙な関係がはじまっていく…