あなたの傍で~1位の彼女と2位の俺…番外編~
きっぱり断られたにも関わらず、尚も食い下がる父。
「蓮くん。話だけでも聞いてくれないかい?」
「すみません。家に帰って受験勉強したいんで…もう帰りたいです。」
甘いマスクで、強気な発言をするものだから、少し離れた場所から見ていた私は、面白いものでも見るような気持ちで2人のやり取りを眺めていた。
父の話の途中で、ソファーから立ち上がる蓮に、父は名刺を無理矢理握らせ、
「絶対諦めないから!!」
と言っていた。
事務所を出て行こうとする蓮を、少し遠くから眺めていると、私の方を向き、
「期待に添えなくて、申し訳ありませんでした。」
とペコリと頭を下げたんだ。
中学3年生の男の子が、こんな礼儀正しく頭を下げることにビックリして、思わず私もペコリと頭を下げる。
「あ…いえ…。社長が強引に連れて来て…こちらこそゴメンナサイ。」
そう言って、顔を上げると、
「こちらは良いんです。
では…失礼します。」
と満面の笑みで事務所を後にした。