囀~サエズリ~
しばらくして、入れ墨の男と彼女は一緒に暮らし始めた。

夜な夜な“ずっずずず”っと音がして目をさました。

額に風穴の空いた男がたって男を見ている。

襲い掛かるわけでもない。

ただじっとずっと見ている。

入れ墨の男は恐怖した。幽霊なんて信じていなかったが信じざるを得ないからだ。

それから毎晩、囀る音が響いた。

医者に行き、診断してもらおう。

「今日はどうなさいました?」

椅子を回し振り返った医者の額にも風穴が空いている。

うわぁ―――!!

逃げ出すことの出来ない恐怖が入れ墨の男を追い詰めた。
< 16 / 17 >

この作品をシェア

pagetop