暇だから、ゲーム好きなイケメンを殴りに行こう!
「はぁああああ!」


全ての力を拳に込めて、斉藤の美麗な顔に向けて放つ。空気を切り裂き、一直線に飛んでいく拳を見て斉藤はニヤリと笑った。


_ッ、しくじった!


気づいた時にはもう遅く、対象の斉藤の姿が消え、拳が虚空めがけ勢いよく突っ込み…空振り。私の体はぐらりと傾き、顔面から見事に着地した。


「う、痛ぁ!」
「残念だったねぇ。今日も僕の勝ち」
「で、でもゲームなら!」
「ゲームなら?」


つい口癖で言ってしまった言葉を、いつものニヤニヤ笑いで返される。無様に倒れた私の顔を、斉藤はしゃがんで覗き込む。言いようのない屈辱感に襲われた。


くそぅ、天は二物を与えまくるじゃないか。なんでよりにもよって、斉藤が完璧なんだよ…!


「なんでもない!」
「あははー、やっぱり美東ちゃんは面白いな」
「うるさい!さっさと行きやがれ!敗者への情けは無用!」
「んー、でもさぁ」


斉藤の指が私の鼻の下に触れる。抵抗しようとしたが、倒れた衝撃からか、全身が悲鳴をあげていて、動くのを許されない。斉藤は少し眉を下げ、何かを指につけ、私に見せた。悔し涙で歪んだ視界にうつったのは…
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