粉雪
合コンのお誘いも無いままに、オフィス内では「お局さま」と呼ばれ始めているのも承知している。
楽しみと引き換えに得た今のポストに不満はないけれど……。
フッと、ガラスに映るボヤけた自分の姿を見つめる。
きつく束ねたポニーテールに素っ気ない化粧、黒ブチのメガネにリクルートスーツ風の飾り気のないスーツ。
2度目のため息をつき、ポニーテールを外して、髪をとき、メガネを外した。
エレベーターの窓にポツリポツリ雨雫。
「あっ」
オフィスに傘を忘れたことに気付く。
適当に操作ボタンの数字を押そうとした時。
エレベーターが止まり、静かに扉が開く。
「こんばんは
遅くまで、お疲れ様」