天使の奏でる音
部屋の中は暖かい。
既に雇われた家政婦がいるせいだろう。
「生活に必要な物は揃えてあります。足りない物や欲しい物があれば用意しますので言って下さい。」
有村が廊下を歩いていく。
「奏さん、靴は脱いで下さいよ。」
有村は後ろに目でもあるのか⁉︎
そのまま上がろうとした俺に振り向くことなく告げる。
「スタジオはここにはありません。とりあえず、ココにはピアノとギターだけ用意してあります。」
「あぁ…分かった。」
廊下を抜け、リビングらしき所につく。
リビングの奥のキッチンには人のいる気配がする。
「おかえりなさいませ。」
家政婦だろう、声と共に女性が姿を見せた。
「どーも。」
やる気のない挨拶。
市原悦子じゃねーのか。
「家政婦の藤堂です。よろしくお願いします。」
「奏さん、休まれますか?」
「ああ…そうする。」
時差ぼけだろう。
眠い。
ベットルームにつくと、置かれているベットに倒れこむ。
不眠症の俺はなかなか眠ることが出来ない。
他人のいる部屋なんてもってのほかだ。
しばらく寝てなかったな…と思いながらも横にはなったが、眠れるわけもない。