天使の奏でる音
2
ん…?
寝ていたのであろうか。
身体を起こすと毛布がかけてあったのか、毛布が落ちる。
時計を見るとあれから2時間程経過していた。
まだまだぼんやりとする頭を抱えて、ベッドにいるとドアのノックが聞こえた。
ドアを開けると、家政婦だ。
「何?」
「起こしてしまいましたか?申し訳ありません。」
さっきは挨拶だけだったので、まともに顔を見たのは初めてだった。
家政婦のと言っていたので市原悦子みたいなオバさんを想像していたが、若い。
「いや…起きたところだった。」
「そうですか。何か口に入れますか?」
「あぁ…そうだな。」
ベッドルームを出て、ダイニングへと進むと食事が用意してあった。
典型的な日本食。
ごはんに味噌汁、肉じゃがに揚げ出し豆腐、秋刀魚の塩焼き。
「アメリカでの生活をされていたと伺っていたので、日本食にしました。嫌いなものはありましたか?」
「ないかな…」
「良かったです。」
ニコリと笑って彼女は、食事し始める俺を見つめていた。
「えっと…」
「藤堂です。」
「藤堂さん。俺のこと、何て聞いてるのかな?」
彼女は、俺のことを知ってるのか?
音が紡げない俺を。
惨めな俺を。