駆け抜けた少女-番外編-
「んー、雪降りそうだから、干しても乾かないだろ」
「そうかな?じゃあ、室内干しに変更しようかな」
できるなら手狭な室内は避けたいんだけど。
「お前、また道場に干そうとしてないよな?」
「土方さん。そのまさかですよー」
ちょうど通りかかった土方にヘラリと答えると、土方は器用に片方の眉を上げ溜め息を漏らした。
以前雨が続いた時は、屯所中に洗濯物が干されて、それでも追いつかなくて道場にまで流れ込んできた洗濯物を思い出したのだろう。
「神聖な道場に干すな。稽古もできねえだろうが」
「そんなこと言わないでくださいよ。じゃあ、どこに干せって言うんですか。こんな狭い場所で」
「狭いってお前、それ八木さんの前で言うなよ」
狭いねえ。やっぱりそろそろ屯所移転も視野に入れるべきか。なんて呟きながら、結局なんの解決策も与えてくれないまま去って行く土方。
……文句だけ言っていくなよ。
「そう睨むなよ矢央。俺らも手伝ってやるから」
「そうですか?じゃあ、これ“道場”に干してきてください」
「……結局道場にも干すのね」