駆け抜けた少女-番外編-
そして僕は裏切った者に裏切られ、そしてまた裏切りを繰り返した。
新選組を裏切ったのに、その僕をまだ仲間だって言ってくれる。
新選組に戻ろうと言ってくれる。
その時本当に嬉しくて、もう一度と願ってしまった僕は伊東さんを裏切ったことになるんだろうか。
いや、最初から心はずっと新選組と共にあったんだろう。
身体は新選組を裏切り、心は伊東さんを裏切ったんだ。
なんて酷いやつだと自嘲する。
……もうね、瞼も持ち上がらないんだ。
矢央ちゃんが僕を呼ぶ声はするのに、その声に応えてあげられない歯がゆさ。
それでもやっと解き放たれるという解放感が僕の魂を連れ去っていくように、ふわりと身体が浮いた感覚がした。
ゆっくりと瞼を開けると、目の前に血だらけの僕自身とそんな僕の周りで泣いてくれる愛しい人達が見えて少し驚く。
「平助さん」
これはどういうことだ?と考えている僕を呼ぶ声に振り返ると、また驚く。
「お華ちゃん?」
そこには死んだはずのお華ちゃんが悲しそうに微笑んで立っていたから。
その時悟った。
「…ああ、僕死んだのか」
「はい。お迎えに参りました」
「お華ちゃんが?」
「私ではご不満かもしれませんが、これが私のせめてもの償いだと思って」
「…不満か。不満なんてないよ。僕が迷わないように迎えにきてくれたんだね?ありがとう」
矢央ちゃんのことがあったから、お華ちゃんのことを責めはしたけど、昔は妹のように可愛がって遊んだ仲だ。
不満なんてない。