駆け抜けた少女-番外編-
「なあ、腹減ったって~」
「矢央ちゃん手当て~」
「矢央、まっさーじ」
………うるせぇ。
四人分の足音が次第に部屋に近付いて──あれ、止まった?
「ちょっと永倉さん原田さん平助さん、しーですよ。土方さん寝てるみたいだから」
「ん? お、ほんとだ」
「土方さんの寝姿なんて貴重だよねえ」
「ほらほら、せっかくお休みしてるんだから静かにしてあげてください。三人共散った散った」
「……しゃーねえ。ほら行くぞお前ら」
……ふ。少しは気が利くじゃねぇか。
騒がしさも遠ざかり、これで漸く眠りにつけると思った。
「いくら昼間はまだ暖かいって言っても、そのまま寝てると風邪ひいちゃいますよ」
矢央だけは部屋を去らず中に入ってきたようで、押し入れから取り出した布団を俺にかけてくれた。
こういったところは女なんだよな。
そのまま部屋を去るのかと思ったが、すぐ傍に座った気配がした。
「うわあ、こうしてちゃんと見ると、ほんと土方さんってイケメンだあ」
……いけ、めん? なんだそりゃあ。
「髪サラサラだし、睫長いし、沖田さんとどっちがカッコいいかなあ?」
そりゃあ、俺に決まってらあ。
「ふふ。 ねえ土方さん、ずっと眉間に皺寄せてないで、たまにはこうやってリラックスしてくださいね。 いつもご苦労さまです」
………途中の言葉の意味は理解できねぇが、なんだかくすぐったい気持ちになっちまった。