駆け抜けた少女-番外編-
矢央が風邪をひいた場合
前の日の夕方くらいから違和感があった。
鼻はむずむずするし、喉はカラカラしていたし、食欲もあまりなかった。
そして翌朝、予想通りというか──私はどうやら風邪をひいたらしい。
「…ゴホッ、ゴホッ…」
「完璧風邪やな。滋養を取って薬飲んで寝とけば治るやろ」
新選組の観察方でもあり医療も嗜む山崎丞さん、普段は意地悪で冷たい感じがする彼だったけど、体調が悪いこういう時はやっぱり頼りになるもんだ。
「お粥作ってくるから少し待っときや」
「…ふあい…コホッ…」
熱のせいで上手く回らない舌で返事をすると、クスリと笑って頭を撫でられた。
くすぐったいけど気持ちいいなあ。
山崎さんが戸の外に消えて暫く経った時、廊下の方がドタバタと騒がしくなって、なんだろうと目を開けた。
戸の方に顔を向けた時、丁度戸がそろりと開き。
「矢央ちゃん、風邪ひいたって聞いたけと大丈夫?」
平助さんだった。