冷徹執事様はCEO!?
「あれ?轟さんは?」

轟さん、とは私がこの屋敷で生活していた時にいた執事だ。

上品な初老の紳士だった。

「轟さんは現在腰を痛めて、自宅療養中です」

まぁ、と言って私は眉を顰める。
落ち着いたらお見舞いに行ってみよう。

「先ほどは大変失礼な振る舞いをして申し訳ございませんでした」

田中さんはこちらが恐縮してしまうほど深々と頭を下げた。

「気にしないで。私もとてもこの家の人間には見えないような格好だったし」

私は自分の身なりに視線を向けて、肩をすくめる。

「しかし…」と、言って田中さんが目を伏せると長い睫毛が強調された。
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