冷徹執事様はCEO!?
私は泣きながらも、これまでの経緯を掻い摘んで一通り話した。

「田中がepicの代表だったとはね」全てを聞き終わると航生は小さく溜息をついた。

気分は落ち着き、涙はようやくとまった。ティッシュペーパーで鼻をかみすぎて皮膚がヒリヒリする。

「でもさ、アキも田中稜が異性関係でクリーンだなんて本気で思ってたの?地位もお金もあって独身で、見た目も良いときてる。女性が放っておくわけないじゃん」

同じ境遇で女性に放っておかれていないであろう航生が言う。


そう、思ってた。恥ずかしながら。

たまの休みにどこかへフラリと出かけることがあったけど、いつもは大体家にいるし、そもそも堅物そうな田中が他の女に靡くなんて想像だにしていなかった。

よりによってお相手がモデル、って所も癪に障る。

田中のくせに生意気なのよ。

「アキだって婚活と称し、男と遊びあるいてるんだろう?田中の事言えた義理じゃないと思うけどなー」

「私はセックスしてないもん!」

「姉の性生活の話って何かグロいな」私の明け透けな発言に航生は眉を顰めて露骨に嫌そうな顔をする。
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