冷徹執事様はCEO!?
『燁子か?今どこにいる?』

「今…航生のところにいる」

『そうか、稜から話は聞いたよ』

稜… って田中のこと?匠ちゃんが名前で呼ぶなんて随分親しげだ。

『今からそっちに行くよ』

「え、いいよ。わざわざ来なくても。匠ちゃんも忙しいでしょ」

『何言ってんだ。水臭いな。燁子は大事な妹だろう』

パパの血を色濃く継いだ仕事人間の匠ちゃんがここまで心配してくれるなんてちょっと意外。

胸がジンと熱くなってしまった。

「ありがと。匠ちゃん大好き」

『ああ、直ぐ行くから待ってろ』と言って匠ちゃんは電話を切った。

「何だって?」航生が尋ねる。

「今から来るって。さすが長男、頼りになるわ」

「あっそ」航生は匠ちゃんを褒めた事が気に入らなかったようで、スッと目を細めた。

「航生も優しいから大好きよ。私を助けてくれてありがとう」いじけた弟の頭をそっと撫でてやる。

「キモい」なんて言ってるけど、頬は緩んでる。いくつになっても可愛いやつだ。
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