冷徹執事様はCEO!?
私はだだっ広い敷地を駆け抜けた。

どんなに優秀でもモロ!葛城家の財産と家柄目当ての人とは結婚なんかする気にはなれなかった。

とりあえずパパ達が帰るまで姿を眩ませとけばいい。

箱根の別荘にでも行こうかな、なーんて考えてたら、注意力が散漫になっていた。

フラリと薔薇のうえこみから人影が現れたが気づかず突っ込んでいた。

「きゃあ!」

衝突の勢いで私は尻餅を着く。

「申し訳ありません!」

腰をさすりながら見上げた瞬間、息が止まりそうになる。

「燁子…?」

「…田中」私は掠れた声で呟く。

「余所見してて気がつかなかった。すまない」

田中は私を抱き起こしてくれた。ふんわりと香る懐かしいコロンの香り。

「怪我はない?」田中は私の服についた砂を払い落としてくれる。

「大丈夫。ありがとう」

「そんなに急いで何処へ行くんだ?」

ああ…この抑揚のない声。久しぶりだわ。

「ちょっと、コンビニまで」私は言葉を濁す。
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